語りつくせぬ漆の魅力
人の手でしか創れない最高の漆器
塗太郎は輪島の塗師屋です。
塗太郎は1987年創業 輪島塗漆器の上塗り師です。
昭和62年に上塗り専門店として開業。
輪島塗の産地では、塗り物の技術習得をするには評判の良い漆器店に弟子入りをし、4年間の修行を積むことから始まる。
その間に仕事はもちろん業界の秩序や道徳も身につけなければ一人前としては認められない。ましてや独り立ちをするには産地内での評判も味方につけなくてはならない。
幸いにも私は名門漆器店に弟子入りが叶い、よい先輩たちにも恵まれ、下塗りから上塗りまでの技術習得が出来た。
ただ自分の中では、遮二無二作るだけの職人ではなく、作り手とそれを楽しむお客様とが一体になることが理想との考えがなぜかやればやるほど強くなっていったし、潜在的な考えとして持っていたようにも思う。
その背景にはおそらく私の生い立ちにある。生まれ育ったところは輪島市ではあるが山間の農村であり、およそ漆器産地の文化とはかけ離れている。25件ほどの小さな村ではあったが大きなお寺があり、学校もあってそれなりの歴史と文化をはぐくんでいた。とくにお寺の行事にはかならずと言っていいほど塗り物が使われ、使い方にも作法があった。その影響からか各家庭でも祭事用の漆器が取り揃えられており、漆器の欠かせない生活習慣で育った。
10数年後業界に就職が決まり親方との初対面の日、村や家で使われていた塗り物はこの地で生産されたことを初めて知ることとなる。塗り物創りに従事して数十年が経過し、業界も様変わりし、かつては社会と一体となった漆器産業も需要が激減し、当然後継を志す若者もいない。
わずかにこの道に入る人たちはほとんどが漆芸美術としてアーティスティクな意識で物創りをする。しかしながら塗太郎ではそれが出来ない。なぜなら塗り物を使う人は自分の自己満足ではなく、目的があって塗り物を選び、その効果を誰かに伝えたいことにあると思う。
我々はただただそのお手伝いをしているにしか過ぎない。
塗太郎 敬具
輪島塗の技術を絶やさぬために
この道50年近くになりますが近年輪島塗とは?という論議を産地内でよく耳にします。
我々が若い時にはなかったことです。
なぜなら塗り物産地で職を身に着けて生計を立てる事は学校を卒業した若者にとってごく自然な流れでした。町の文化や習慣もすべて漆器屋が中心となり輪島は塗り物の町として歴史を重ねてきました。しかしながら平成に入ってから物つくりのグローバル化が進み輪島での生産量も激減致しました。
この流れは全国的に起きており、地方の生産地はより付加価値の追求へと進みます。当然のことながらこれまで以上にデザイン性を高めたり、作り手の個性を前面に出した物つくりが支流となっていきます。
これまで横並びで市場を支えてきた産地が縦長に大きく変わっていきました。漆に従事する若者は作家や漆芸家の肩書の基、自己アピールに奔走することとなります。
当然のごとく、斬新なアイディアや画期的な製法も考案されていきます。それとは逆に変化に戸惑いながらもかたくなに固定観念を貫く頑固者とに二分されていきます。
結果として失われた過去の繁栄と現在とを比較する輪島塗の定義とは?という議論となるのです。
私見ではありますが漆は自然の恵みであり、人しか扱うことが出来ない不思議は塗料です。
創り手がどれだけ工夫してもその神秘的な魅力はすべての人が判断できる知性を持ち得ています。時代に逆わらず、漆と向き合うことが期待に応えるものと確信をいたしております。
今、塗太郎に出来ること
ありがいことで、体験工房の問合せやご相談を多数いただいておりますが、今しばらくお待ちください。
サービス提供にあたっての部材やスペース確保の問題だけでなく、輪島市へ至る交通網や地域環境の整備が今だ追いついておらず、安心して楽しんでいただける環境が整い次第、必ず再開致します。
また、販売商品の拡充につきましても、今しばらくの時間が必要ですが、従来のアイテムはもとより新商品開発にも精力的に取り組みたいと思っておりますので、ご期待下さい。