2024.1.1の震災を経て

日本の中央北西に位置する能登半島輪島市は、世界的にも知れた伝統工芸輪島塗の産地であります。また日本海の豊かな漁場が近く港町としても栄えてきました。

2024年1月1日、例年になく積雪のない穏やかな年明けとなりました。

各家庭ではお正月の夕食の準備に取り掛かろうとした矢先でした。
【16:06】震度5弱の揺れがあり、ここ数年お隣の珠洲市を震源地とした群発地震として、大きな恐怖感もなく収まるのを待ちました。日本人が1年で一番大切に思う元旦でもあり、気を取り直してお祝いの準備に入ろうとした時、【16:10】震度7これまで経験した事のない揺れが襲い掛かり、収まりかけるもさらに強い揺れに見舞われ、家の中の戸が外れ、物が飛び交う騒然とした事態となりました。

その直後大津波警報が発令され、住民全員が高台へと非難をいたしましたが、【17:30】火災が発生し強風にあおられ、中心商店街がほとんど焼けてしまう大惨事となりました。

日本だけにとどまらず世界中からのご支援には心より感謝いたしますが、いまだ余震が続き当時を思い起こさせる不安な毎日が続いております。
しかしながら我々はここに住み続けなければなりません。

なぜなら一番住み慣れた場所であり、私たちが一番力を発揮できる場所だからです。
特に輪島塗の製作には漆に合った環境が不可欠です。一番重要なのは安定した湿度です。漆は湿度を加えることでいろんな結果を生み出します。輪島の地形は日本海からの湿った風が山のふもとに安定的な湿度を与え、漆器の生産に適した環境を生み出し、世界に誇る堅牢優美な輪島塗を完成させました。

今回の震災で観光資源や港の破損など破壊されたものは多々ありますが、人の英知と風土は何も変わりません。
復旧の遅れはいたるところで見受けらますが、輪島塗従事者は確実にこの地で今まで以上の新たな活動を始めております。これを機にさらに発展し、繁栄へと繋げていくことをお約束いたします。